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『天と地の守り人<第三部>』 上橋菜穂子 [読書]

天と地の守り人 第3部 (3) 

 バルサとチャグムはこの物語の発端となった
チャグムの祖国、新ヨゴ皇国へむかう。
新ヨゴ皇国は南のタルシュ帝国に攻め込まれ
一方、ナユグの四季も変化の時をむかえていた。

   

オールスターキャストの『天と地の守り人』三部作、完結。
シリーズの全ての出来事が、ここに収斂していきます。
始まりの物語は『精霊の守り人』
「精霊の卵」を皇太子チャグムが抱いたときから、運命が動き出す。
「精霊の卵」がチャグムを選んだのは意味あることだったのでしょう。

二部までの流れで、物語としての落としどころは、みえてきます。
あとは成り行きを見守るように読み進める。

ロタとカンバルの兵士を率いて祖国に帰ったチャグムは、
酷い惨状を目の当たりにする。
「わたしは死臭を身にまとい、屍をふみながらあゆみ、
これから血で、この身をよごす…。」

父と子は違う道を行くしかない。

天使が、穢れない、真綿につつまれたような生をまっとうすることで、
国がすこやかにたもたれるのだと教えられ、それを信じて生きてきた父だった。
そのいっぽうで、帝の血筋が清浄な天ノ神の血筋であるとすべての者が信じ、
つゆもうたがわないことが、この国のかたちをささえているということを、
父は冷静にみぬいていた。

父は清浄なる天の子として、その生をまっとうするだろう。
自分は地をいく。血にまみれ、死臭をまとい、
まよいながらみつけた道を、あゆんでいく。

「天災は、天ノ神の声」
<大天災の告>をだすことを星読みに許し、人々が避難し始めたのちも、
帝は扇の上に残り、天子でありつづける道を選びます。

村人たちを救ったのは呪術師たちの警告。
トロガイは膨大な精力を必要とする大呪術コン・アラミ<金の蜘蛛>にいどむ。
出水の直前に村人たちに「逃げろ!」と警告する金の鳥を飛ばす。
術が成功しても、生きてのりこえられるか定かではない、それでも試みる。
「きく耳もたんやつは、ほっておけってか?…わしは、いやだね。
首根っこつかんでも、人々をたすけだしてやるさ。」
トロガイさん、最後までかっこいいです。

バルサはタンダを見つけることができました。
弟の身代わりに戦場に赴いたおひとよしでやさしいタンダ。
いままで看病される立場だったバルサがタンダの治療をし、
タンダを死から取り戻す。
間に合ってよかった。

タルシュ帝国も皇帝オーラハンの死を迎え、局面は大きく動きます。
第一皇子ハザールと第二皇子ラウルのどちらが次期皇帝に選ばれるのか。
二人の熾烈な争いが、北の大陸への戦略をも変えていきます。
ラウルとヒュウゴの息づまるやりとり。
タルシュに生きる枝国の民の不満が国を揺るがす。
そのゆがみを正せばこの国は安定する。
他国の侵略よりも、足下の安定を、ヒュウゴが望む方向にラウルは耳を傾けます。
ラウルの立場が危ういいまだからこそ、ヒュウゴは舵を切らなければならない。

ロタ、カンバル、新ヨゴの連合軍はタルシュ軍を殲滅する。
タルシュ帝国は停戦をもとめてくる。
戦いは終わった。

新ヨゴ皇国の復興のために、問題は山積みにされています。
チャグムはシュガの手を借りて、ひとつひとつ決定していかなければならない。

神の威光をまとったさからうことのできぬ絶対者である帝という地位。
帝などという位はなくしてしまえばいいと思いながらもチャグムは帝になる。
「国が死の縁でようやく踏みとどまっているいまは、シュガがいうとおり、
人びとの心をひとつにまとめる者が必要だ。」
ただし、チャグムは父のようにはならないでしょう。

天子の統べる国、日本もそう信じられてきました。危急の時には神風が吹く。
敗戦の時、天皇は戦争責任者として断罪されなかった。
壊滅状態の日本の復興のためには、精神的支柱が必要だったから、
というのも理由のひとつ。
チャグムの望みと人々の望みが異なっているのならば、
妥協するのはチャグムのつとめ。
急激な変化で、人々を揺さぶることのないように。

穏やかに物語は終わりをむかえます。
家に帰る、ここで終わるのは指輪物語もそうでしたね。
トロガイさんはさすがです、生きてる
バルサとチャグムが会うことはもうないでしょうけれど、
もし、チャグムに危機が訪れ、バルサを求めたら、
バルサは必ず駆けつけることでしょう。
チャグムにはシュガがついている。
そしてシュガはトロガイの二人の弟子のひとり。
絆はつながっています。

守り人シリーズ、完結です。
でも、わたしたち読者のなかで、物語はまだまだ続いています。
バルサは用心棒を続けるのか?
タンダと落ち着いて暮らすことはないのか?
新ヨゴではチャグムに謀反を企てる動きはないのか?
カンバル王は頼りないけどだいじょうぶ?
タルシュでのラウルとヒュウゴの関係はどうなったの?
などなど…
勝手にスピンオフを考えてしまいます^^

上橋菜穂子さん、長い間楽しませていただいて、ありがとうございました。


『天と地の守り人<第一部>』

『天と地の守り人<第二部>』


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