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『アポストロフィS』 大島弓子 [大島弓子]

大島弓子作品に登場する男性で一番のお気に入りは
「バナナブレッドのプディング」の御茶屋峠です。
不動のナンバーワン^^

「バナナブレッド…」以前の作品では
「アポストロフィS」の「メンソール」が大好きだった。
くわえ煙草がトレードマークの美形です。

メンソール(司馬乱)は田村浪(ろう)につきっきり
一級下の浪のために卒業までおしとどめた
かすりと浪は幼なじみ
咲也(さくや)はかすりと仲良しで
必然的に成立した四人グループ
しかし卒業を間近にひかえ
四人の関係が変化していく

「メンソールのタバコすいすぎると
再起不能 非生産者におちいるんですって
人の話によると」

「おれは咲也姫
非生産者になりたいんだ」

メンソールは浪を追いかける
浪はかすりが好き
メンソール→浪→かすり
そして咲也は三人のそばにいるのが息苦しい。

あなたと
接吻いたしましょう
桜草が咲いたなら
李(すもも)の花が咲いたなら
梨の花も待ちましょう
茱萸(ぐみ)の花もそえましょう

薔薇が咲いては遅すぎる
トゲが二人をさすでしょう
香りがあなたを殺すでしょう
薔薇の花が咲くまえに
椿の一枝髪にそえ

あなたと
接吻いたしましょう

0319 005-01.jpg

これはかすりのつくった詩
かすりに告白しようとして失敗した浪に
咲也はこの詩を見せる
そして解説する
この詩にこめられたかすりの気持ちを

恋人を思う気持ちは気に入っているもの
全部そえて贈りたいくらいといっているのに
花はその象徴でもあるわけ
でもその気持ちは不安なのよ
「いつまでもぐずぐずしていると
だれかがあなたをされってしまうかもしれない」
薔薇がその象徴
「ええい!!おそれていてはダメ
花ばなの勇気をかりて
あの人にこの気持ちをこめて接吻しよう

椿を髪につけるのはなぜか
椿の花首はあらあらしくゆすったりすると落ちやすい
「だから恋人よ どうぞ乱暴にしないでね
椿の花をおとさないくらい」

この詩がもう一ヶ所違う場面で出てきます。
メンソールが父を見送るシーン
リフレインされたかすりの詩が
違う色合いで響きメンソールの心情に重なります。
大島さんはこういう言葉の使い方がとても巧みです。
アポストロフィーS』で最も印象に残った
忘れられない一ページです。

メンソールは父に複雑な感情を抱いている。
高名な指揮者の父が二年間の欧州演奏旅行を前に
食事でもどうかとひとり暮らしの息子を訪ねてくる。
しかし息子の態度はぎこちなく会話はすれ違うばかり
「パンでもないか わたしは腹ペコなので」

それじゃあ行く からだに気をつけてな
パタンとドアが閉じる音
メンソールは机のなかを引っかき回し
やっと見つけたクラッカーを手に父を追いかける
しかし間に合わず発車するタクシーを見送るばかり

0319 001-01.jpg

薔薇が咲いては遅すぎる
トゲが二人をさすでしょう

翌日父の乗ったジェット機が墜落した。

クラッカーが…
クラッカーがあったんだ
父さん!!
どこかに
食いかけがあるってわかってたんだ

どういうふうにいって
だしてやろうか
考えていたんだ
もったいぶって
どのように
もったいぶって
だしてやろうかと
考えていたんだ

回想シーン
仕事に忙しく家庭を顧みない父
「お父さまの音楽をきくと
すべて許してしまえるから不思議ね」
いまわのきわに穏やかな表情で語る母
「お父さまはね お母さんのほかに恋したかたがいらしたの」
その女性が生んだ男の子が浪だった。

かすりに恋する浪は乱の手を離れた
卒業式
乱は咲也の秘めたる思いを受け止める
「これからは あんたの護衛をする」

渡せなかったクラッカーが
いつまでも心に残って忘れられない
大好きな作品です。

「かすり姫 ないてもいいけど
あとで ニヒリストにだけはなるなよ」
このセリフも好きです。
こんなふうに言われてみたいっ!
と思ったものです^^

*
*
*

「椿の花を落とさないで」は
吉田秋生「河よりも長くゆるやかに」に
引用されていました。
不意打ちのようにこれが出てきてびっくりでした。

以前にも書いたのですが
ドラマ「野ブタ。をプロデュース」で
野ブタ(信子)がぎこちない関係の義父に
おにぎりを渡そうかどうしようか迷い、
やっぱり渡したいとタクシーに乗って去っていく義父を
走って追いかけるというシチュエーションがありました。
あとで調べると脚本家・木皿泉は
大島さんのファンであることがわかり、
あれはメンソールの渡せなかったクラッカーだったんだなと
思い至った次第です。
信子はおにぎりを渡せました。
よかった。
木皿泉さんも渡せなかったクラッカーが
心にひっかかっていたのかなと思ったりしました。
(ご本人に確認をとったわけではないので
あくまで私の想像(妄想?)です)


『アポストロフィS』1976年JOTOMO3月号掲載
(JOTOMO!なつかしい)

1976年に発表された作品 wikiより

  • ヨハネが好き(『別冊少女コミック』1月号)
  • ユーミン(『週刊少女コミック』4・5合併号 - 14号)
  • 全て緑になる日まで(『別冊少女コミック』2月号)
  • アポストロフィS(『JOTOMO』3月号)
  • ローズティーセレモニー(『月刊ミミ』4月号)
  • タンポポ(『プリンセス』5月号)
  • おりしもそのときチャイコフスキーが(『月刊ミミ』7月号)
  • まだ宵のくち(『JOTOMO』7月号)
  • 七月七日に(『別冊少女コミック』7月号)
  • きゃべつちょうちょ(『別冊少女コミック』8月号)
  • さようなら女達(『JOTOMO』9月号~12月号) 
  • にじゅういちめんそうとあけちたんてい(『週刊マーガレット』40号)共著:木原敏江
  • ハイネよんで(『別冊少女コミック』11月号)

  • 好きな作品ばかり^^
    至福の時だった高校一年の頃。
    (リアル生活はそんなに至福じゃなかったけど^^;)
    翌1977年には「バナナブレッドのプディング」が
    1978年には「綿の国星」が発表されます。

    lbl レンガ.gif

    031901.jpg

    メンソール、いつ見てもお美しいっ!
    この頃の大島さんがお書きになる美形キャラは
    本当に麗しくてうっとりでした^^

     lbl レンガ.gif


    タグ:大島弓子
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    コメント 14

    おきざりスゥ。

    浪を汚らわしいもののように云われて食べてたパテを見合い相手に投げつけた咲也姫。
    親なしっ子と苛められ「お父さん欲しいんだ」と泣いていたチビ浪。
    「どうして顔で顔を打とうとするの?」が名台詞のかすり。
    すぐ思い出す場面は各人にあるけれどメンソールのそれはやはり「クラッカー!!!」に止めを刺しますな。

    >渡せなかったクラッカーが
    >いつまでも心に残って忘れられない
    >大好きな作品です。

    かの時にいいそびれたる大切の言葉は今も胸に残れど

    云えなかったからこそ忘れない忘れられない言葉。

    miyucoサンは木皿泉氏に彼女も同じくいつまでも心に残って忘れられなかったクラッカーを渡して貰ったのですね。
    by おきざりスゥ。 (2009-03-19 20:13) 

    miyuco

    moeさん、nice!ありがとうございます!
    by miyuco (2009-03-20 13:39) 

    miyuco

    >スゥ。さん
    そうなんですよ、印象に残る場面が
    たくさんある作品でした。
    かすりちゃんは可愛く、咲也姫は凛として美しかった。

    30年以上も前の作品の感想なのに
    それに反応してくださる方がいらっしゃるという事は
    望外の喜びです。
    それと同じように大好きなドラマの中に
    忘れられないエピソードの片鱗を見つけて
    さらにそれを書いた脚本家の方が大島弓子さんの
    ファンだとわかった時、なんとも言えない幸福感を
    感じました。
    ファン同士の密かなメッセージのやりとりのような。
    だからこそクラッカーを(ドラマではおにぎり)
    渡してもらえたことが嬉しかったです。
    nice!とコメントありがとうございました。
    by miyuco (2009-03-20 13:50) 

    びっけ

    miyuco さんのこの記事を読んで、しばらくぶりに『アポストロフィS』を読みました。
    あぁ、そうでしたね、クラッカーでした・・・。
    「野ブタ~」に、そういうシーンがあったのですか。
    大島作品への見事なオマージュですね。

    私がこの作品を読んだのも高校 1 年の時、
    部室にあったマンガ本ででした。
    自分も同じ高校生なのに(まだ 1 年生だったけれど)、大島弓子が描く高校生達(特に咲也姫とメンソール)は会話もエスプリに富んでいて、あまりにも大人で・・・自分がものすごく幼く感じられたものです。
    後 2 年で、こんな会話ができる高校生になれるだろうか?
    それより何よりボーイフレンドがいるだろうか?
    煩悩のど真ん中の青春時代でしたわ。(笑)
    せめて少女マンガの世界で、満たされぬ想いを昇華させていたような・・・。(^^;

    ★私にとっても不動のナンバー・ワンは御茶屋峠です!!
    (^^)v
    by びっけ (2009-03-21 00:10) 

    miyuco

    >びっけさん
    私もまさにドツボにはまっていた時期でした^^;
    マイナス思考ここに極まれりという
    クラ~イ女子高生だったので
    なおさら大島さん始めとするマンガ家さんたちの
    メッセージを感度よく受け止められたのかなと思います。
    nice!とコメントありがとうございました。

    ★御茶屋峠は唯一無二の存在ですわ^^


    by miyuco (2009-03-21 18:58) 

    薔薇少女

    29歳の頃まで、漫画命の女の子?だったのに、いつの間にか、漫画も本も読まなくなってしまいました!
    内容も殆ど思い出せません!情けないです。。。
    >あなたと
    接吻いたしましょう
    って云うフレーズはおぼろげに記憶が有りますが・・・?
    接吻って云う言葉にメッチャ反応してましたから(爆)
    漫画の素晴らしさを新聞の投稿欄で熱く語った事も
    有るというのに、、、
    皆さんは、詳細まで覚えていらっしゃって、スゴイです!
    miyuco さんちへ来ると、気分まで少女に戻ってしまいます(笑)
    by 薔薇少女 (2009-03-22 15:18) 

    miyuco

    >薔薇少女さん
    私もあまりマンガを読まなくなりましたので
    新しいマンガ家さんを開拓するのは難しいです。
    でも、心に残っている作品のことを書くのは楽しい♪
    「接吻」という言葉には当時の私もドキッとしました^^
    nice!とコメントありがとうございます!


    by miyuco (2009-03-22 17:36) 

    sknys

    miyucoさん、こんばんは。
    女学生の友(JOTOMO)は手にしたことがありません。
    初出(雑誌掲載)の時に読んでいると、
    その時代を共に過ごしたという一体感があって
    感慨も深いでしょう。

    「アポストロフィーS」のテーマは「初体験」かしら?
    「よくわかるほん」というハウツー本が出て来ますね。
    高3の冬もなって、初キスすら未体験のヒロインは
    「初心なネンネ」なのかな?

    山岸凉子の「メタモルフォシス伝」(1976)も
    忘れられません。
    この作品をリアルタイムで読んでいたら、
    灰色の学園生活も少しはマシなものになったかもしれない
    ‥‥と、悔やんだりして^^;
    by sknys (2009-03-26 00:41) 

    miyuco

    sknysさん、こんばんは。
    コメントありがとうございます。
    テーマ、何でしょうね?
    あるのかな^^;
    「薔薇が咲いては遅すぎる
    トゲが二人をさすでしょう」
    私にとって重要ポイントはここですが
    テーマとは言えないし…

    「JOTOMO」は大島さんの作品を読むために
    初めて買いました。手を出しづらい雑誌でした。
    男性にはなおさら難しいですよね。
    「メタモルフォシス伝」大好き^^
    灰色の受験生といえば大島さんの
    「まだ宵のくち」を思い出します。

    リアルタイムで読んでいた少女マンガは
    びっけさんがおっしゃったように
    日常からの離脱であるとともに
    豊かなパラレルワールドを生きていたのかなと
    今になって思います。
    それはリアルワールドでの考え方に
    違った視点を与えてくれました。
    救われたことは多かったです。

    by miyuco (2009-03-26 19:54) 

    おきざりスゥ。

    先日B00K 0FFで吉田秋生<河よりも長くゆるやかに>を購入。
    ユーミンの<ダンデライオン>が然り気なくていながら効果的に配されていたことは四半世紀を経ても記憶に残っていましたが絶妙に引用される“椿の花を落とさないで”の方は本記事を読んだ時には(そーだったっけナー?)と忘れていたのでmiyucoサンの書かれた通り“不意打ちのようにこれが出てきてびっくりでした”

    「昔読んだ大島弓子さんのまんがでさー」という順子の設定は17。<アポストロフィS>の発表が'76年で<河よりも長くゆるやかに>は'83年なので順子は10の頃に“椿の花を落とさないで”に出逢っている計算。そして「あたしの椿の花は見事に落ちちゃった」と云いながら胸には花を抱き続けている。ずっと。
    miyucoサンや木皿氏の胸のクラッカーの傍に彼女の(それは取りも直さず吉田秋生の)椿の花も咲き続けているのだろう。今も。

    ウチの庭の椿は時季が過ぎてスッカリ終っちゃいましたがネ^^;


    by おきざりスゥ。 (2009-04-18 03:06) 

    miyuco

    スゥ。さん、素敵なコメントありがとうございます^^
    吉田秋生と大島弓子の作風は
    かけ離れている印象だったので
    なおさら不意打ちでした。
    だってフワフワとは無縁な感じではないですか^^
    「櫻の園」「ラヴァーズ・キス」「海街diary」
    などを読むといろいろな物にコーティングされた中にある
    やわらかな心情がとても魅力的に描かれていて
    「椿の花」に共感する部分がここにあるのだとわかります。

    「海街diary」B00K 0FFで見かけたら
    ぜひお読み下さいませ。
    最新作がこのクオリティなんて
    昔から読んでいる人間には本当に嬉しいことです^^

    by miyuco (2009-04-18 20:03) 

    miyuco

    春分さん、nice!ありがとうございます!

    by miyuco (2009-08-10 23:59) 

    すもも

    はじめまして。私も大島弓子大好きで何度も読みました。
    私もバナナブレッドのプディングが一押しです。

    アポストロフィーsはかすりの詩が印象深かったですが、
    冒頭にマッチの即興詩がありましたね。
    あれも好きでした。
    by すもも (2011-05-15 16:41) 

    miyuco

    すももさん、はじめまして^^
    「あわれ マッチ
    軸木 燃えつきぬまま 果てぬ」
    とても印象的でしたね。

    by miyuco (2011-05-16 19:00) 

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