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『この世の春』 宮部みゆき [読書]

おもしろかった!

「サイコ&ミステリー」
なんて書いてある紹介文をみると
身構えてしまいますが、
サイコ風味はそれほど強くないです。


「わたしの大好きな要素 
謎解きミステリー 怪談 
元気な子どもたち かっこいい老人が
常にわたしの作品のなかでは
定番的に出てきますが 
今回も全員そろっています。」

『この世の春』特設サイト
http://www.shinchosha.co.jp/miyabemiyuki/
「作家自作を語る」より引用

元気な子どもたち
かっこいい老人
重苦しい話のなかの救いです。

北見藩で起きた「主君押込」
理由は藩主・重興の乱心
ここから物語は動き始める。

重興が幽閉された「五香苑」
各務多紀はある理由によって呼び寄せられる。
五香苑の館守・石野織部
重興の主治医・白田登
女中のおごうとお鈴
奉公人の寒吉
多紀のいとこであり用心棒の田島半十郎

魅力的な登場人物が物語を彩ります。


重興の固く閉ざされた心を
解きほぐす事はできるのか?

重興の重用をうけて成り上がった
元御用人頭の伊東成孝
常に藩主・重興の側に仕え
他人を寄せ付けなかった成孝が
カギを握っているのかと思えば
実はそうでもないという。。。

では重興の乱心の原因はどこにあるのか?
心を閉ざした重興は快復することができるのか?


以下、未読の方はご注意を


*
*
*

「この世の春」というタイトルから
ハッピーエンドかもとチラッと思いましたが
ひねってある可能性も否めない。
しかし、なんと、本当にハッピーエンディングでした。


重興は自分を取りもどすことができました。


幼子のときから何年もの間
癒えぬ傷をたったひとりで抱えてきた重興を
なぜもっと早く救えなかったのか。

養育係でありもっとも長く側に仕えていた織部でも
踏み込むことができなかった。
藩主の父子の領域に家臣が立ち入るなど、
あの時代にはありえないことでしょう。

そこに狙いを定めていく敵対する人物たち。
卑劣極まりない。

奴らを倒したのは
奴らがつくりだした人格であったというところに
少しだけ胸がすくような気持ちになりました。


「この世の春」では
敵は完全なる絶対悪と描写され、
主人公の周りの人間は基本的に善人です。

最近の宮部さんの作品にしてはめずらしく、
悪は倒され、主人公たちは幸福な結末を迎えます。

めでたしめでたし。



しかし、悪党の背後には強力な勢力があったはず。
不安の芽は残りますが、
聡明な重興と
重興が信頼する五香苑チームなら
必ず乗りきれると信じたいです。

「事ここまでの解明は、
重興の錯乱が隠しようもなくなり
だからこそ隠す必要もなくなり、
その病状をこじらせていた伊藤成孝が
身辺から遠ざけられ、
白田登という開明的な医師と、
重興に忠心を捧げる石野織部という「爺」が揃って
初めてなしとげ得たことなのである。」

苦難を乗り越えたみなさまが
この世の春を謳歌している。
長い物語の果ての明るい結末は
読んでいるわたしも嬉しい限りでございます。

* * *

終盤に向かって重苦しくなる頃合いに
女馬喰・しげとコナラ村の金一が登場する。
生命力にあふれた人物が
絶妙なタイミングで出てきて物語に弾みをつけます。
こういう仕掛けがうまいなと思います。

重興の正室であった由衣の愛らしいこと!
本来ならばお雛様のようなふたりで
仲睦まじく暮らしていたはずなのに。
「重興の暗い心の淵に向き合い続けた」
聡明な姫の身を裂かれるような別れへの嘆きが
不憫でなりません。

「はかなくて過ぎにし花の森を経て
白滝の音の懐かしきかな」

由衣が多紀に用意した絹の寝衣。
淡い鴇色。
決して白絹ではない。






この世の春 上

この世の春 上

  • 作者: 宮部 みゆき
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2017/08/31
  • メディア: 単行本
この世の春 下

この世の春 下

  • 作者: 宮部 みゆき
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2017/08/31
  • メディア: 単行本



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