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『あやかし草紙 三島屋変調百物語伍之続』 宮部みゆき [読書]

江戸は神田の筋違御門先にある袋物屋の三島屋で、
“おちか”は風変わりな百物語を続ける。
シリーズ第一期完結編
「完結編」・・・ってどういうことだろうと読みはじめる。


「そうだ。聞き捨て、聞き捨てと言いながら、
おちかはこの三年間、
黒白の間で語られた話を受け止めることによって変わってきた。
いや、「変わらなければ聞き捨てにできなかった」というべきか。
だが富次郎は、客の語りを絵に描くことで、
一つの怪異をしまいにする。
おちかが、「大丈夫ですよ」なんて
偉そうなことを口に出して言えるようになったのも、
富次郎が話を絵にして封じてくれるからこそなのかもしれない。」
(あやかし草紙より)


第一話 開けずの間
塩断ちが元凶で行き逢い神を呼び込んでしまい、
家族が次々と不幸に見舞われる。


おそろしい話でした。
行き逢い神から逃げ切るのは至難の業。
黒白の間を訪れてよかったですね。
『塩断ち』という言葉に激しく反応し
妻を過剰に責めたのは
行き逢い神の力が影響したのでしょうか。
最後の一行までおそろしかったです。

第二話 だんまり姫
亡者を起こすという“もんも声”を持った女中が
大名家の葬られた過去に向き合う。

一番好きな話です。
おせいのお故郷訛りが心地よいです。
「もんも声の主は、その力が
世のため人のためになるから生まれてくる。」
「お役を果たすための命」

幼いおせいに心得を教えてくれる大刀自様。

この教えがなかったら生きていくのはもっと困難だったでしょう。
「大国のお殿様のお役に立つかもしらん」

小さな男子の姿をした「花兜城の城主」
抗うことを許されなかった男の子の悲しみは
『この世の春』を思い出します。

「一座と共に旅し、その土地の災いを
一身に集める形代となろう。」

幼き城主は解き放たれ姫君の声は戻ってきた。
おせいは立派にお役目を果たしました。


第三話 面の家
屋敷の奥に封じられた面の
監視役として雇われた女中の告白


第四話 あやかし草紙
百両という破格で写本を請け負った男の
数奇な運命が語られる

語り手は瓢箪古堂の若旦那・勘一
勘一はすべてを語ってないのではとおちかは訝る。
納得できない。
勘一の穏やかな眼差しの奥には、
まだ隠されているものがあるような気がしてたまらない。
「でもわたし、気になるんです」

次の語り手はめでたく古稀も通り越したという婆様。
都合六度も嫁にいったという数奇なお話。
死ぬのがこわくないという婆様の
長閑な笑顔と、動じない物腰。
「___ わたし、同じような人を知ってる。」
「それこそこの婆様とそっくりの、
つかみどころのない飄々とした人を知っている。」


勘一の話は終わっていない。
しかしそれを聞き出すにはよっぽどの覚悟が必要になる。
さて、おちかはどうするのか。


第五話 金目の猫
三島屋の長男・伊一郎が幼い頃に遭遇した不思議な話
そしてシリーズ第一期を完結させるに
ふさわしい出来事で終わります。




以下、未読のかたはご注意を


*

*

*

おちかはどうしても気になる。
だから覚悟して尋ねる。
「見届ける覚悟です」
そして思い切った言葉を勘一に伝える。


「あやかし草紙」の引き寄せた縁(えにし)は
ここにめでたく結ばれることとあいなった。


めでたし、めでたし。
きっと「よく笑う嫁」になれますよ。
おちかさん、おめでとうございます!
ずっと読んできたわたしも嬉しい。


[お嬢さんは、今のあの方とご縁がありますよ。]
お勝にはお見通しでしたね。


おちかの覚悟を受けいれたのだから
勘一は早々に寿命が尽きるということはない。
おちかを不幸にするはずがないから。
それがわかって安心しました。




次の話「金目の猫」では
おちかのモノローグは一切なし。
富次郎に引き継がれたことが
鮮やかに印象付けられる。


「おちかは成長し、
もう百物語の聞き手を続けなくてもよくなった。
この黒白の間に足を運んでくる語り手たちを介さずとも、
おちかは自身の生きていく意味を探せるようになった。
幸せを求められるようになった。」


おちかさんをいつまでも黒白の間に
縛りつけるのは忍びないので
この成り行きは嬉しいけれど
やっぱりすこしさびしいです。







あやかし草紙 三島屋変調百物語伍之続

あやかし草紙 三島屋変調百物語伍之続

  • 作者: 宮部 みゆき
  • 出版社/メーカー: KADOKAWA
  • 発売日: 2018/04/27
  • メディア: 単行本

タグ:宮部みゆき

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