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「AX アックス」 伊坂幸太郎 [読書]

おもしろかった。
こういう伊坂幸太郎の本を読みたかったんだわ。

大満足です。
わたしが好きになった伊坂さんのエッセンスに
久しぶりに触れたような気がします。


5編からなる連作短編集。
「グラスホッパー」「マリアビートル」に連なる
「殺し屋シリーズ」の最新作。

主人公の「兜」は凄腕の殺し屋
しかし家庭では恐妻家。


・・「殺し屋シリーズ」っていうくくりがあるって
知らなかった・・・
殺し屋の描写は迫力がありました。

なぜこんなにも妻に気をつかうのか
さっぱりわからなかったけれど、
ラストで兜の気持ちがすとんと胸に落ちました。

絶対に手放したくないと思いつめると
臆病になるのかもしれない。
がんぱったよね。


ボルダリングジムで出会った恐妻家の松田さんは
ストレスで爆発してしまった。

それは自然の成り行きかもしれない。
兜がそうならないのは
切実な思いを抱えているからなのでしょう。


兜はびくびくしているけれど
妻の描写はそれほど不快なものではない。
愛すべき人物と描かれているわけでもないけれど
「crayon」のあの場面で涙をこぼす彼女は
真っ当な感覚を持っているのだとわかります。

「妻がなぜ泣いているのか、その感覚について
完璧に把握できてはいなかった。
が、少しづつ理解できるようにもなっている。
そして、もっと、理解したい。」
「人の感情を失ったまま、消えていくのは避けたかった。」



「淋しいけれどあたたかみのある物語に
なったような気がします」
伊坂さんの言葉がとてもよくわかります。


「起きたら、宇宙から帰ってきたような格好で
ぶっ倒れていたことがあった」
家庭を持った息子の克己が
笑いながら懐かしい父の思い出を語る。
父は家族が起きる前にスズメバチの巣を退治し、
(不意に現れた殺し屋にも対峙し)疲れ果てたのだ。

「今思えば、父はああやって、僕たちが知らないうちに、
僕たちのことを守ってくれていたのかもしれない。」


以下、未読の方はご注意を


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タグ:伊坂幸太郎

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『この世の春』 宮部みゆき [読書]

おもしろかった!

「サイコ&ミステリー」
なんて書いてある紹介文をみると
身構えてしまいますが、
サイコ風味はそれほど強くないです。


「わたしの大好きな要素 
謎解きミステリー 怪談 
元気な子どもたち かっこいい老人が
常にわたしの作品のなかでは
定番的に出てきますが 
今回も全員そろっています。」

『この世の春』特設サイト
http://www.shinchosha.co.jp/miyabemiyuki/
「作家自作を語る」より引用

元気な子どもたち
かっこいい老人
重苦しい話のなかの救いです。

北見藩で起きた「主君押込」
理由は藩主・重興の乱心
ここから物語は動き始める。

重興が幽閉された「五香苑」
各務多紀はある理由によって呼び寄せられる。
五香苑の館守・石野織部
重興の主治医・白田登
女中のおごうとお鈴
奉公人の寒吉
多紀のいとこであり用心棒の田島半十郎

魅力的な登場人物が物語を彩ります。


重興の固く閉ざされた心を
解きほぐす事はできるのか?

重興の重用をうけて成り上がった
元御用人頭の伊東成孝
常に藩主・重興の側に仕え
他人を寄せ付けなかった成孝が
カギを握っているのかと思えば
実はそうでもないという。。。

では重興の乱心の原因はどこにあるのか?
心を閉ざした重興は快復することができるのか?


以下、未読の方はご注意を

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タグ:宮部みゆき

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『今日の人生』 益田ミリ [読書]

「どうしようもなく腐ってしまいそうな日も、
明日の自分がまた新しい人生を始めてくれる」


益田ミリさんが、タイトル「今日の人生」に込めた思いだ。
               「朝日新聞の記事より引用」

益田ミリさんのイラストは見覚えがあったのですが
文章を読んだのは朝日新聞の連載が初めてでした。

金曜日の朝刊、生活面に掲載されている
「オトナになった女子たちへ」
漫画家の伊藤理佐さん、イラストレーターの益田ミリさんが
交互に執筆する日常を切り取ったエッセイ。
いつも楽しみにしています。

心がささくれたときの話のいくつかが印象に残ります。

lbl レンガ.gif

心がささくれ、むなしくなり、カフェに入って休憩しても
虚しさは消えず、夜になり、渋谷の人ごみをうろうろ。

「レンタルビデオ屋の前を通ったとき」
「ベイマックスが立っていたのです」
「本当は抱きつきたいような気持だったんだけど」
「ちょっとさわって その場を去ったのでした」

ほんの少し、ほんの少しだけ心が軽くなった。

「もしもわたしが映画『ベイマックス』を観ていなければ、」
「あれはただ、レンタルビデオ屋に飾られている
バルーン人形なのです」
「けれど、わたしは、ベイマックスを知っていて」
「彼が人を傷つけることを禁じられた
優しいロボットであることも知っていたのです」

「知っていることが わたし自身の助けになった」

「そういうものが、数多くあればあるほど」
「それらが支えとなり
倒れずに済んでいる
ということもあるのだと思ったのでした」

「映画や、音楽や 芝居や
そして、本を読むことは

自分の世界に「手すり」をつけている

そういうことなのかもしれません」

lbl レンガ.gif

半世紀以上生きてきて、いろいろなことがあったけれど
なぜ私は倒れずにすんだのだろう
なぜ心が折れずにここまでこれたのだろうと
ふと、思う時があります。
益田ミリさんの文章は、ストンと胸に落ちました。
答えが見えた気がしました。

わたしに「手すり」をつけてくれた
あらゆることに感謝したい気持ちです。

そして、わたしが10年以上にわたって書いてきた
このブログは「手すり」の記録だったんだなと
思ったしだいであります。

 

 

今日の人生

今日の人生

  • 作者: 益田ミリ
  • 出版社/メーカー: ミシマ社
  • 発売日: 2017/04/20
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)

 

 



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『三鬼 三島屋変調百物語四之続』 宮部みゆき [読書]

三島屋変調百物語
おちかが聞き手の変わり百物語の四冊目です。
おそろしい鬼が描かれた表紙に
身構えながら読みはじめましたが
『食客ひだる神』でホッと一息つきました。
夏場の休業の理由が愉快。
みっつ並んだ小豆の判じ物がいいですね。
そういう意味だったのね。

ほほえましい話もこわい話も
宮部さんは巧いです。

最後までありがたい守り神であった「ひだる神」
『おくらさま』では守り神のおそろしさに慄然とします。

『迷いの旅籠』
[石杖先生が優れた筆さばきで呼び出し、操ってみせたのは、
結局、生者の魂の方だったのかもしれない]
人々はこの世を去った者たちを取り戻したいと
狂おしいほどに願う。
しかし貫太郎の静かな覚悟の前にたじろぐ。

『三鬼』
藩の失政のはてに打ち捨てられた山奥の村。
「生吹山は人を許さない。
人は罪をおかすものだから。
洞ヶ森は秘事を抱いている。
そこには人の罪があるから。」
重苦しい物語の最後に少しの明るさがあります。
理不尽に痛めつけられた人が
不幸なままに生きていくことがなくてよかった。

『おくらさま』
黒白の間を訪れた謎めいた老女の
悲痛な叫びがまだ耳の底に残っている。
だからおちかは調べようと思った。
辿り着いたのは寝たきりの病人。
お梅は悲しみを吐き出し胸のつかえがおりたと言う。
そしておちかに語りかける。
あたしと同じになってはいけない。
「時を止め、悔恨に打ちひしがれ、
昔を恋うて懐かしむだけの老女に。」

時を止めてはいけない。
自分の心のなかに閉じこもってはいけない。

おちかは少しづづ変わっていきます。
怒ったり泣きじゃくったり。
心を動かすのを自分に禁じていたような
痛ましい姿はなりをひそめました。

別れはつらいです。
いかにも彼らしい身の処し方に
異を唱えることなどできないがゆえになおさら。

「一人が去り、一人が加わった。」
貸本屋の瓢箪古堂の若旦那・勘一
商売柄、顔が広くて地獄耳。
昼行灯の風情の食い道楽。
これからどんなふうに関わってくるのか
楽しみです。

北村さゆりさんの挿画がすてきです。

「驚いたことに、島田髷(しまだまげ)を結い
振袖を着ていた。どちらも若い娘の支度だ。」
「着物は大胆な縞柄(しまがら)で、
魔除けの意味もある可愛らしい<麻の葉>柄と
黒繻子(くろじゅす)の昼夜帯(ちゅうやおび)を合わせ、
花簪(はなかんざし)も華やかに美しい」

わたしなんぞでは容易に想像できない身形(みなり)ですが
この挿画を見ればよくわかります。

特設サイトからお借りしました → 

story-4.png

 029 点線青.gif

聞いて聞き捨て、語って語り捨て。
己の胸に秘めておくには辛い、不思議な話、
せつない話、こわい話、悲しい話を語りに、
<黒白の間>へやってきたお客が
あの世やあやかしの者を通して語り出したのは――
亡者、憑き神、家の守り神

第一話 迷いの旅籠
お化けを見たという百姓の娘
第二話 食客ひだる神
夏場はそっくり休業する絶品の弁当屋
第三話 三鬼
山陰の小藩の元江戸家老
第四話 おくらさま
心の時を十四歳で止めた老婆

三鬼 三島屋変調百物語四之続

三鬼 三島屋変調百物語四之続

  • 作者: 宮部 みゆき
  • 出版社/メーカー: 日本経済新聞出版社
  • 発売日: 2016/12/10
  • メディア: 単行本



タグ:宮部みゆき

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『いまさら翼といわれても』 米澤穂信 [読書]

〈古典部〉シリーズ最新作。

折木奉太郎、千反田える、里志、摩耶花
〈古典部〉4人の6篇の物語。

『鏡には映らない』
「やるべきことなら手短に」という
奉太郎のモットーは怠け者の繰り言だと
摩耶花は馬鹿にしていた。
中学の卒業制作の事件も
面倒だと思ったら任された仕事を
奉太郎が簡単に放り投げた結果だと思っていた。

「やるべきことは手短に」
しかし、やるべきことをやらなかったことはない。
〈古典部〉でのふるまいを見ていればわかる。
では、あの一件はどういうことだったんだろう。

折木が何の思惑もなく
無責任なことをするはずがないと
今の摩耶花は考える。
〈古典部〉のはじまりの頃は
あんなに奉太郎を敵視していたのにと
なんだか嬉しくなります。

むきだしの悪意に愕然として
意趣返しの見事さに胸をなでおろします。

『長い休日』
奉太郎は心の底から変わったりしなかった。
ただ自己防衛の手段を身に着けただけ。
姉の懸念は回避されました。
そして予言のほうは当たったわけです。
米澤穂信のラブストーリーは大好きです。

『わたしたちの伝説の一冊』
摩耶花は整理できたようですね。
ひとつ目標も決まったけれど
苦難の道のりが待ってるような・・・
がんばって。

『いまさら翼といわれても』
まさにタイトル通りの心情で
混乱する千反田える。
心の芯に刻まれていた「やるべきこと」が揺らぎ
目の前の「やるべきこと」に身じろぎする。

〈古典部〉シリーズは続編があるようです。
彼らはまだまだ変化していくのでしょうね。


いまさら翼といわれても

いまさら翼といわれても

  • 作者: 米澤 穂信
  • 出版社/メーカー: KADOKAWA
  • 発売日: 2016/11/30
  • メディア: 単行本







 


タグ:米澤穂信

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